ブラックホーク所属のクロユリ中佐とそのベグライターであるハルセはこのバルスブルグ軍でも知らぬ者はいないほど仲良し上司部下である。
毎年決められるベストベグライター賞で連続受賞保持コンビで、その記録はここ数年破られたことなどない。

そんな世間も認める仲良しベグライターにあり得ない事件が起こった。






「クロユリくーん。」

「クロユリ中佐、ほらカツラギ大佐特製ケーキですよー。」

同じブラックホーク所属であるヒュウガ少佐とそのベグライターであるコナツが手を尽くしてクロユリをなぐさめるが、当のクロユリは見た目に反したいつもの毒舌は何処に行ったのかと思ってしまうぐらい自失呆然としたままだ。
言うなれば魂が何処に飛んで行ってしまったかのようで、時折・・・

「ハルセぇ〜〜」

と消えそうな声で何度も己のベグライター(であった)彼の名を呼んで、手の平に置かれた可愛らしいドクロの髪止めを涙目で見つめている。
それはクロユリが今、左の髪に付けている髪止めと対象になるデザインで二つが元々はセットであることが分かる。

「何でぇ・・・」

そう髪止めに向けて問いかけるがその問いに誰も答えてくれる人物がいないと尚更クロユリの瞳がうるみを増してゆく。
そんな様子のクロユリなのでヒュウガとコナツが何を言おうにもお手上げ状態としかいいようがない。

「まさかあのハルセさんが一方的にコンビ解消なんて・・・」

そんなクロユリを見ながらテイトはそうつぶやいた。
二人はテイトがアヤナミのベグライターになってブラックホークに入って以来、離れている所を見た事がないぐらいいつも一緒だったのだ。
しかもハルセは正にベグライターの鏡の様な人物で、上官であるクロユリの意図を的確に汲んでサポートができるとあってテイトもあんなベグライターになりたいとこっそり思っていた為、今の事態は信じられないの一言しか出てこない。

「そうですねぇ・・・」

テイトのそんなつぶやきにカツラギ大佐もいつもの笑顔に何処か困った顔だ。
テイトより長い付き合いのあるカツラギですらこの様子、それが余程深刻な事態であるとより物語っている。

「ハルセぇ〜」

「な、泣かないで下さい!」

遂にポロポロと涙を流し始めたクロユリに一同はどうすることも出来ない。
どうするよ、どうしますかそんなことを言いながらおろおろしている二人はもうなるようになれとクロユリの頭を撫でてやることしか出来なかった。






「ようやく静かになりましたね。」

ついに泣き疲れて眠ってしまったクロユリを仮眠室に寝かしてきた残りのブラックホーク一同は全員で顔を付き合わせて事態の把握に乗り出していた。
その気迫や参加部に出撃命令が下った時以上の真剣さで、さすがの帝国随一の黒法術部隊でもこの問題に頭を悩ませているのが良くわかる光景だった。

「少佐だったら放って置いたんですが・・・」

「コナツ、酷っ!?」

まぁ年中仕事をサボり倒して己のベグライターに追いかけ回されているようなヒュウガである。
今のクロユリの様になってしまっても日常業務にさしたる障害も起こらないだろう。
むしろコナツ的にはその手に判子を握らせ、椅子に縛りつけて強制的に仕事をさせられるとすら思っている。
しかしその前にヒュウガにあいそをつかせて今のハルセのようにベグライターを辞めてしまう可能性もありそうだから余計に怖い。
そんなヒュウガと違いクロユリは見た目の幼さに反してちゃんと日々の書類仕事はこなす為、いるといないでは大違いなのだ。
只でさえいらない仕事が大量に回されてくるブラックホーク、こんな時に出撃の指令が出ては少々困る。
一刻も早い解決が必要なのだ。

「・・・と言うわけでなんでこんな事態になったのか一度整理してみようか。」

要するに、ハルセが自分はクロユリのベグライターにふさわしくないと言って一方的にクロユリのベグライターを辞めてしまったというのだ。
先ほどクロユリが持っていたベグライターになった際にクロユリから譲り受けた髪止めをクロユリに突き返して。

そんなハルセの行為は今までハルセにべったりであったクロユリにはかなりの衝撃で、ああなってしまっても不思議ではない。
しかし皆一様にあのハルセが、と言う疑問が拭えない。
ハルセだってクロユリ以上にクロユリ史上主義でいつもクロユリにべったりだったのだから・・・
そんな周囲の疑問もあるが、ヒュウガが再び口を開く。

「後ねぇ・・・困った事があってさ。」

「なんですか、ヒュウガ少佐?」

「いやね・・・」

あのヒュウガですら言いにくそうにする話とは、クロユリとハルセの事件に何かを感じたブラックホーク以外の部署でそれぞれの幹部に付いているベグライター達が、以前から自分は上官にふさわしくないと思っていたと言って上司から譲られた品を返却し、ベグライターを辞めてしまうという事態が頻発していると言うのだ。

「それの通称がクロユリ革命。」

仕事をサボって城塞内をコナツと追い掛けっこに余念のないヒュウガが仕入れてきたのがこの情報。
くだらないと言えばそれまでなのだけれど・・・

「それはなんと言うか・・・」

「なんか・・・ブームになってますね。」

言いづらそうに苦笑するカツラギと少し呆れた様子でツッコミを入れてしまったテイトであるが、しかし補佐官が突然辞めてしまうということは今まで補佐官がしていた仕事が出来ないと言うことだ。
しかも要塞内でこの革命は頻発しているというから、このままでは業務が滞りバルスブルグ陸軍の機能低下を招くだろう。

「やばいですね・・・」

「そう、やばいんだよ!!」

ベグライターが突然辞めてしまうのはその幹部の問題なので知った事ではないが、問題はこのクロユリ革命とやらがブラックホーク発端となっている事だ。
ぶっちゃけお前らが勝手にやってんだろと言ってやりたいが、あのうるさい上層部の事、これ幸いと参謀部に文句を付けてくるに決まっている。

「「「やばい(です)ねぇ・・・」」」

もう一度やばいと全員でハモってしまったその声に一人ツッコミの声が入った。

「何がだ?」

「「「「アヤナミ様!(アヤたん!)」」」」

ヒュウガらが顔を付き合わて話あっている中、執務室に帰って来たのは我らがブラックホークの長アヤナミ参謀長官。
ちょうど軍議からお帰りになった所らしく眉間の皺の深さマックス状態に全員が予想した通り相変わらずの上層部の様子がありありと伝わってくる。
しかし機嫌が悪かろうと良かろうと困った時には我らが参謀長官。
クロユリもハルセもアヤナミが言えば話を聞いてくれるかもしれないとそんな希望を抱いてアヤナミに事の次第を説明したのだけれど・・・

「知らん。」

の一言で片付けられてしまった。

「なんでさアヤたん!」

ヒュウガが机に乗り出して抗議するが、アヤナミがムチを取り出したことで一瞬口をつぐんでしまった。

「私が出て行った所で根本的な解決にはならんだろう?」

「そりゃそうだけどさぁ。
 でもなんとかしないと・・・」

上層部がうるさい、と言葉にしなくともアヤナミも十分理解していた。
ならば・・・

「テイト、コナツ二人で何とかして来い。」

「「えぇ!?」」

テイトもコナツもまさかのアヤナミからの命令に二人で講義の声を上げる。
しかしアヤナミは其以上取り合ってはくれず、相変わらずエベレスト山脈級の山々を為す書類へと手を伸ばしてしまった。
しかも・・・

「そうですね・・・
 お二人は同じベグライターですし、ハルセ君の悩みも解るかもしれません。」

「カツラギさんまで!?」

皆のお母さん(笑)カツラギまで賛成の声を上げてしまってはもう二人に勝ち目はなかった。
しかもクロユリはアヤナミの命令なら素直に聞くだろうが、今回の騒動の原因はハルセの方らしいからアヤナミが出ていって強制的に命令しても根本的な解決にはならないのは分かる。
分かってはいるのだが・・・

「ハルセさん、あぁ見えて頑固だからなぁ・・・」

コナツがどうしようかとぼやく。

「クロユリ中佐もあの様子じゃあ・・・」

先ほどのクロユリの錯乱っぷりを見てしまったテイトが困った顔でコナツの方を見つめる。
しかしこのまま放っておくことなどできず、参謀長官殿によってクロユリ革命解決部隊に任命されてしまったコナツとテイトは無策のまま執務室を後にするのだった。






「はぁ・・・。」

「ふぅ・・・。」

特に解決策の見えないまま、寮のハルセの私室まで来てしまったテイトとコナツ。
ブラックホークの執務室や下士官の集まる部屋なども探し回って見たのだが、何処にも見当たらないハルセがいるだろう最後の心当たりが此処である。 のだが・・・

「コナツさん、先にどうぞ。」

「いやいや、テイトが呼べばいいよ。」

ほとんどの住人が仕事で出払ってしまっている昼の寮は静まりかえっていて、大きく作られた窓からは明るい日差しがたっぷりと差し込んでいる筈なのに何処か暗い雰囲気が漂っていて居心地が悪くて仕方ない。
けれどどちらもハルセの部屋の扉をノック出来ずに譲りあっているだけで何も進展は起こらない。
しばらくそうやって先輩だ後輩だからとやりとりを繰り広げていたが、いきなり目の前のドアが開いた事で終わりを迎えた。
しかもそのドアを開けたのが・・・

「は、ハルセさん・・・」

今まさに訪ねようとしていた相手からの接触。
何も心積もりのなかった二人は多いに慌てふためいてしまう。

「なんで・・・」

「声が、聞こえてきましたから。」

「「・・・。」」

考えると当たり前の理由にますます何も言えない二人。
そんな二人の訪問に苦笑しながら何事も聞かずに部屋へと迎え入れてくれる。

「どうぞ、少し散らかっていますが・・・」

恥ずかしそうやな言うハルセの部屋は確かにハルセの真面目な性格にしては散らかりが目立っている。
しかしその散らかり具合の原因が・・・

「ってこれ参謀部の書類じゃないですか!?」

足の近くに落ちていた一枚の紙を見て思わず叫んでしまったコナツにハルセはいつもより少し疲れた笑顔を返す。

「えぇ、仕事をしないで皆さんに迷惑をかけてはいけませんから・・・」

「ハルセさんっ・・・」

ハルセがクロユリのベグライターを辞めたとはいえ、まだ参謀部から移動になった訳ではない。
処理を待つ書類は山のようにあるし、それを知っているからこそハルセはこうやって自室に仕事を持ち込んでまで書類を捌いているのだろう。
そんな軍人の鏡の様なハルセの爪のアカでも何でもいいから上司であるヒュウガに飲ませたいと思ったコナツは間違っていない。

しかしこんなに気にするぐらいならどうしてクロユリのベグライターを辞めるなどと言い出したのかますます分からない。
もうこれは直接聞いてしまってもいいのではないか、正直面倒な事が嫌いなテイトはそう思い、遂にハルセに真相を聞き出した。

「どうしてクロユリ中佐のベグライターを辞めるなんて言い出したんですか?」

「テイトっ!?」

いきなりのテイトの遠慮と容赦のない聞き方に逆にコナツの方が驚きの声をあげるが、テイトは気にせずハルセの方を見上げる。
二人でもだもだ考えていてもラチがあかないのだから。
見つめられたハルセはしばらくの間黙り込んでいたけれど、テイトの大きなエメラルドの瞳に負けてぽつりと声を漏らした。

「クロユリ様が、お野菜を食べて下さらないから・・・」

「「は?」」

ハルセの口から出た予想もしなかった言い分にテイトとコナツからは思わず呆れた声が上がってしまう。
思わず・・・

「今、なんて?」

と聞き返してしまう程に。

「クロユリ様が人参とピーマンをどうしても食べて下さらないのです。
 どうにかしようと今まで色々と努力を重ねてはみましたがもう・・・」

「はぁ・・・」

悲壮感をその長身全体で背負っているように暗くなるハルセだが、テイトとコナツは正直言ってそんなことぐらいの話でしかなかった。

「ま、まぁ好き嫌いは誰にでもありますし・・・」

「そうですよ、どうしても食べなくちゃならないものでもないし・・・」

「いけません、クロユリ様はまだまだ育ち盛りだと言うのに!!」

初めて会った頃のお昼ご飯はポテトだけだったのだと拳を作ってまで言うハルセに、士官学校時代に似たような話で親友に怒られてきたテイトは耳が痛い。
そんな苦い顔をするテイトの横で関が切れたようにハルセの愚痴はヒートアップしてゆく。

「今までクロユリ様に満足して下さるように努力を重ねてきましたが、私の力ではもう限界かもしれません・・・」

「いやいやいやいや、ハルセさん考え直して下さい!」

愚痴が弱音に変わり、もう無理などと言い出す始末。
けれどあのクロユリのベグライターをハルセ以外の誰かが務まるなど到底思えない。
かなり人の好き嫌い(しかも大半は嫌いに属するだろう)が激しいクロユリがあそこまでベタベタする人間が他にいるだろうか、いや居るまい。
それを思えばハルセ以外にふさわしい人間などいないというのに。

「でも、よかった・・・
 ハルセさん、クロユリ中佐が嫌いになった訳じゃないんですね?」

心の中で憧れていたクロユリとハルセの関係が崩れてしまったのではないかと不安だったが、責めるのは自分の至らなさばかりのハルセにその不安は感じられない。

「当たり前じゃないですか!
 世界一敬愛しています!!」

テイトの質問にそう大声で言い切ったハルセの言葉に続いた声は予想していなかった者だった。

「ハルセぇ!!」

可愛らしい声を上げて飛び出してきた小さな影は迷うことなくハルセの懐に飛び付いた。

「く、クロユリ様!?」

それはまさにハルセがベグライターを辞めたいと宣言していた相手であり、けれどハルセが今でも一番に考えているクロユリであった。

「なんでここに中佐が・・・」

とクロユリが飛び込んできたドアの方に目を向けるといつもと同じへらへらと笑いながら手を振るヒュウガの姿。
どうやらヒュウガがクロユリを此処まで連れて来たのだろう。
書類仕事はからっきしだが、こんな時だけは周りが驚く程の鋭さを見せたいい仕事をするものだ。

「ヒュウガ少佐・・・」

どうしてここにと目線だけでコナツが問うと、二人の近くにやってきたヒュウガはだってコナツならここに来ると思ったからねぇ☆と笑みを深くして自身のベグライターにすり寄った。
まるで褒めて褒めてと言わんばかりに。

「もうっ、その気を書類仕事にも活かせて下さいよ・・・」

そうため息をつきながら己の直接の上司を見上げるコナツだがその表情は柔らかくむしろヒュウガを誇らしげに思っていることがよく分かる。

「ん〜コナツが美味しいお茶いれてくれたら頑張れるかもね☆」

「本当なんでしょうね?」

「ん〜多分?
 でもコナツのお茶があったら仕事が捗る気がするなぁ〜だからね、コナツ☆」

「まったく・・・
 約束ですからねぇ?」

まるでじゃれあっているような会話だが、クロユリ達とはまた違うが信頼関係の深さが伺えるヒュウガとコナツ。
そんな二人の関係もクロユリとハルセのそれとは違うが、少し羨ましいと思いながら見ていたテイトだが、クロユリたちを二人っきりにしてあげようと思いハルセの部屋を出てゆくとヒュウガとコナツもそれに続いた。
そんな残された二人はというと・・・

「頑張って野菜も食べるから!
 居なくなるなんて言わないでよぉ・・・」

離すものかと軍服を掴みしがみついてくるクロユリは必死にハルセを見上げる。

「クロユリ様、私の方こそ申し訳ありませんでした。
 力が及ばずに・・・」

「そんなことないっ、ハルセはいつも僕の為にしてくれてるもん・・・」

「クロユリ様・・・」

「だからっ・・・」

大きなハルセの腕の中でもう言葉も続けられず、今にも泣き出しそうな小さな上官。
小さいけれど誰よりも輝いているクロユリの傍に居たいと思ったのは誰だったのか・・・

「クロユリ様。
 もう一度私をクロユリ様のベグライターにしていただけますか?」

「っ・・・何言ってるのさ、当たり前じゃん!
 僕のベグライターはハルセだけなんだからね!」

そう言ってクロユリがずっと大切に大切に握っていた手の中のヘアピンをハルセの方に差し出すとハルセも其れを愛おしそうに受け取った。






結局・・・

本家クロユリ革命は半日と経たないうちに二人の仲直りで解決してしまい、ブラックホークはいつもと変わらず書類仕事に終われる日々に戻った。
一方クロユリ革命に触発されてベグライターを辞めてしまった下士官達はと言うと、本家の様に無事に元の鞘に戻れた者や、逆に上司を怒らせて一生出世の望めない部署に飛ばされたりと色々あったようだ。
特に参謀部におとがめは無かった為、詳しくは語らないでもいいだろう。

「と、いう訳でクロユリ中佐とハルセさんの件は無事に解決致しました。」

「そうか。」

クロユリの問題が解決したことをアヤナミに告げたテイトは残っていた書類を確認し、アヤナミから受けとった。
後はこれらを提出しに行くだけだが、テイトが出て行く前は机狭しと山の様に積まれていたはずの書類が既に無くなっていることにアヤナミの有能さを物語っている。
ベグライターなど必要ないと思ってしまう程に・・・

「お前も・・・」

「?」

「お前も私のベグライターを辞めたいと思ったのか?」

「!?
 俺は・・・」

テイトが思っていたことを見透かしたかのようなアヤナミの質問。
確かにテイトがアヤナミのベグライターになった経緯の中には多少強引なブラックホーク勢のアプローチがあり、本心から望んで今の位置についたのだと言い難い。
アヤナミもそれを理解しているからこんな事を言ってきたのだろう。
けれどそれ以上に・・・

「俺はブラックホークに入れてよかったです。」

始めは嫌々だったかもしれないし、根負けしてしまった面も無いとは言い切れない。
けれどアヤナミを始め、ブラックホークのメンバーはテイトが元戦闘用奴隷だからと言ってさげずんだり差別したりなどしなかった。
むしろテイトの戦闘力を高く評価してくれるし、デスクワークで足りない所も補ってくれて色々と教えて貰うことばかり。
嫌がらせのような書類仕事は毎日大変でくたくたになることも日常茶飯事だけれど・・・

「苦ではないか?」

確かに仕事は未だに上手にこなせないし、アヤナミ参謀長官のベグライターと言う肩書きはテイトが背負うにはまだまだ重たくて、時々その重さで潰れそうになってしまう。
けれどアヤナミはそんなテイトを責めたりなどしない。
テイトが自分の所まで近づいて来るのを待っていてくれる。

「大丈夫です。」

冷酷で容赦がないと言われているが、本当は優しくて仲間思いだと知ったから。
いつしかアヤナミの傍にいれる事が嬉しくて、誇らしく思えるようになってから。

「だから・・・
 俺をずっとアヤナミ様のベグライターでいさせて下さい。」

本心からいつの間にか告げてしまった言葉に気がついて慌てて無かったことにしようとしたが、アヤナミが聞き逃している筈もなく。

「愚問だな。」

返ってきたのはたった一言。
けれどそのたった一言に込められた意味が理解できるから。

「はい。」

これからもずっとアヤナミの傍にいたいと思うのだ。


まだまだクロユリとハルセやヒュウガとコナツの様にはなれないけれど、いつかアヤナミのベグライターとして胸を張れる日がくるように。

「俺、頑張りますから・・・」

そう小さく告げるとそうか、と返ってきた。
その時のアヤナミの口角が少し上がったのを見つけられた事にもっと嬉しくなる。
こうやって少しずつでも近づいて行きたい。

「早くその書類を出して来い。」

「は、はい。」

笑っていたアヤナミを見つめていたら急かされてしまった。
よほど自分は嬉しかったらしく、かなりの時間アヤナミを見つめてぼうっとしていたようだ。

多分アヤナミはテイトが帰って来るのを待っているつもりだろう。
おそらくクロユリとハルセの事も気にかけていたのだろう、テイトが帰って来た頃にはとっくに仕事を終わらていたようなのに執務室で待っていたのだから。
全然そうは見えないけれど本当はとても優しくて仲間思いのこの上司。
早く仕事を終わらせてアヤナミと一緒に帰ろう。

「待ってて下さいね!!」

「あぁ・・・」

今にアヤナミに追いつくから。
今日は一緒に帰りたいから。

そんな事を思いながらテイトはアヤナミの居る執務室を一旦後にするのだった。

















ミカ見てネタを思い付いた当初から書きたかったネタです。
黄薔薇革命ならぬクロユリ革命(笑)
隷属しろネタが出た次の瞬間、これのパロはいける・・・って(笑)

しかしこの話、ハルクロが主ですが、アヤテイ・ヒュウコナはもう鉄板。
気が付いたらこいつらもラブラブしてやがりました(苦笑)
そんなにいちゃつきたかったの?

他にもして欲しいパロディネタとか募集中だったりします。
いきなり番外編のネタが尽きた霧立です(爆)
あ、でもちょっと白薔薇姉妹の出会いネタでパロれそうな気も・・・
う〜〜ん、ちょっと練ってみます。

しかし番外編より本編進めろよって話ですね。
でも楽しかったのでよしとする。
そしてやっぱり全員出したい参謀部好きでした〜〜vv(2010/1/24 UP)