「コーナツぅ!!」

やっと来たか、聞きなれた上司の声を聞いてコナツのイライラは最高峰となった。







とある日のブラックホークの執務室。
主であるアヤナミはベグライターであるテイトを連れて軍議に出ていて不在。
クロユリ中佐は同じくベグライターのハルセを伴い市街へ任務に出てしまって留守。
カツラギ大佐は今日は休暇で確か城塞の外に新しく出来た調理用品店を覗きにいくのだとか。


そんな全員が出払ってしまった執務室にいるのは残るメンバーのヒュウガとコナツではある筈なのだけれど、仕事をしないがもはやいつものことというヒュウガが大人しく仕事をしている筈がない。
今日も何処をほっつき歩いていたのか、昼もだいぶ回った頃にようやく執務室に姿を表してきた。

「何処をほっつき歩いてたんですか!」

ようやく来たヒュウガに思わず机の下に忍ばせた釘バットに手が伸びるが、ここでヒュウガを沈ませてしまうと仕事が片付かない。
力づくで今から机に縛りつけてでも仕事させてやる、そう思って振り向きかけたのだが・・・

「ひゃぁ!!」

首筋に落とされたひんやりとした感触に思わず声を上げてしまう。
そしてそんなことをした元凶を睨みつけた。

「な、何をかけたんですか!?」

とろりとした感触がまだ首筋に残っているが何か分からないと気持悪い。

「え、蜂蜜?」

その手には漫画チックな蜜蜂の描かれたラベルの付いた瓶。
中には光をうけてキラキラと黄金色に輝く液体が詰まっている。
あぁ、だからどろっとしてて甘い匂いがする訳か・・・

「って、なんで蜂蜜なんですか!」

上司がいつも飴を持ち歩いているような甘党だということは知っているが、ついに蜂蜜をそのまま舐めるまでになってしまったのか?
どこぞ遊園地の有名な黄色いクマじゃああるまいし、糖尿病になっても知らないと思う。

「だってコナツに蜂蜜かけからきっと美味しいだろうなってv」

「なにがだってですか!?」

今は就業時間なのである
こんな馬鹿な話に付き合っている暇はない。
しかも・・・

「お、美味しいとか・・・」

いや、普段からいわゆる行為をする時に散々コナツは美味しいだの甘いだのとヒュウガに言われているのだから今更といえば今更である。

そういえば前にも自身のベグライターに蜂蜜をかけたいとかいう馬鹿な会話をしていたことを思い出し頭が痛くなった。
しかしいくらこの上司が馬鹿だと思ってはいても、当事者にされてしまっては恥ずかしさがそう簡単に消えてくれる筈はなく言葉の最後が消えてゆく。

「まぁいーじゃん。
 そんなことよりせっかくの蜂蜜垂れちゃった・・・」

勿体無いと言いながらいきなり顔を近づけてくると・・・

「ひゃぁぁぁぁ!!」

首筋に垂れた蜂蜜に沿ってヒュウガの舌の滑る感触に思わず恥ずかしい声が上がってしまい、慌て口を押さえようとするがそれを察したヒュウガに手を絡め取られ、そのまま後ろの机の上に押し倒されてしまう。

「やっぱり甘いねぇv」

コナツの上で満足そうに笑うサングラスの奥の瞳に何やら危険な光が宿っている。
しかも唇についた蜂蜜を舐める舌がいやらしい。

そんなヒュウガの様子にやばい、と身の危険を感じなんとか止めさせるべく抵抗を試みる。

「ここは執務室です!」

しかも今は就業時間である。
急に誰かが入ってきてしまう可能性が多いにあり得るのだ。
これからヒュウガがするであろう事を他人に見られるなんて自分は恥ずかしさで死んでしまう。
その為死にものぐるいでヒュウガに抵抗を試みるが、悲しいかな普通の人より鍛えている軍人とはいえヒュウガとの体格差と押さえ付けられた体勢のせいでうまく力が入らない。

そんな必死に抵抗するコナツを可愛いなぁなんて思いながら楽しそうに眺めるヒュウガは軍服の襟元を外し上着を脱がせてゆく。
露になった日焼けのない白い首筋に消えかかってはいるが、うっすらと赤い鬱血の後が点々と残っているのが更にヒュウガの欲を刺激する。
しかもヒュウガから逃れようと暴れたせいか、うっすらとピンクに染まった頬と荒くなった息遣いがヒュウガの理性を襲った。

「ちょ・・・聞いてるんですか!!」

うるんだ蜂蜜と同じ色の瞳にきつく睨み付けられて(しかしヒュウガには可愛いとしか写らない)はっとする。

「・・・あ、あぁ。
 まぁ、いーじゃん☆」

「良くないっ!!」

色気を含んだコナツの様子に我を忘れていたなんて言えないヒュウガ。
余裕がないなんてバレたくないから必死になって隠しているのをコナツは知らない。

「離れて下さいぃ〜」

しかしそんなことなど知らないコナツは抵抗を止めようとしない。
その抵抗こそが自身の衣服を乱してしまう原因にもなっているのだが未だ気がつかずに暴れ回る。

「はいはい、ほら蜂蜜だよ〜☆」

最後の抵抗も虚しくヒュウガの手にある瓶が傾けられる。
それに先ほど驚かされたひんやりとした感触を覚悟して思わず目をつむるがコナツに届いたのは蜂蜜ではなく。

「何をしている。」

一瞬にして部屋の空気を氷点下にするような冷ややかな声であった。

「あ、アヤナミ様っ!?」

「あ、アヤたんお帰り〜v」

なんてことだ、恐れていたことが起こってしまった。
この参謀部の主のご帰還に二人同時にその名を読んでしまう。
そして軍議に出ていた筈のアヤナミが帰ってきたということはそのベグライターであるテイトも一緒に帰ってきているということで・・・

「えっと・・・す、すみませんっ!」

多分コナツの恥ずかしい姿を見てしまったことに謝っているテイトにこちらの方が恥ずかしくなってくる。

しかし恥ずかしいことは恥ずかしいが、コナツにとってアヤナミの帰還はある意味救いである。
仕事もせずに部下を押し倒しているヒュウガに是非ともいつも以上にキツイお仕置きをお見舞いしてやっていただきたい。

しかしそうコナツが願うより先にヒュウガの方に動きがあった。

「はい、アヤたんの分。」

おもむろに懐から取り出した何かをアヤナミに向かって投げると、アヤナミはいぶかしげな顔をしながら受け取り手の中のそれに目を向ける。

「なんだこれは。」

「え、練乳☆」

アヤたん前つけたいっていってたよねぇ、なんて言って渡したそれは赤と白のパッケージに可愛らしい苺の絵柄の描かれたチューブは春になったら店の苺売り場なんかの前に並んでるよなぁ、なんて平和な事を思ってしまうそれ。
しかしこの男達の欲の前には只の甘くて美味しい調味料が普通に使用されるなどあり得なかった。

「ヒュウガ。」

「んー?」

「程々にしておけ。」

「え、ちょ、アヤナミ様!?」

「了解ー。
 アヤたんも楽しんできてねー☆」

助かった、そう思った筈の参謀長官様のご帰還だったはずがなんだか思いもよらなかった方向に向かっている。
いつものように鞭を取り出し、目の前にいる上司を容赦なく叩きのめして愚行を止めてもらえると思ったというのに。
しかも・・・

「行くぞテイト=クライン。」

「あ、はいアヤナミ様。」

テイトを連れて何処かへ去ってしまった。
恐らく参謀長官の執務室かアヤナミの自室など誰の邪魔の入らない所であることは確実だろう。

そしてあの懐になおした練乳の使い道というと、ヒュウガの蜂蜜と一緒であろう。
何故ならこのアヤナミこそベグライターに蜂蜜か練乳をかけたいという馬鹿な話をヒュウガとしていた張本人なのだから。

テイトも色々と大変だ・・・

「これで心おきなくできるねぇ☆」

しかし素直にアヤナミにくっついて行ってしまったテイトの無事を祈るより、コナツ自身に迫る危険の方が今は重要だ。
そして参謀長官様の去ってしまった執務室では・・・


「じゃあコナツ、楽しもっか?」

「嫌じゃぁぁぁ!!」


ウキウキでのしかかってくる上司から逃げようと必死になるが、しばらくすると甘い声が聞こえてきたとか。

きっとアヤナミとテイトが消えていった部屋からも同じ声が聞こえてくるのだろう。


甘い蜜と同じ、甘い甘い声が・・・

















アヤナミ様の格好良さ三割減の変わりにアヤナミ様の変態さが三割増しぐらいになってる気がします(滝汗)
ヒュウガは・・・まぁ元々変態だし(酷)

しかし攻めより受けのが可哀想な役回りなので攻めの変態具合は可哀想じゃない気も・・・(オイ)

多分こんな攻めしか書けないんだろうなぁと思いつつ、突然続きを思い立つ駄目字書きな霧立でした〜(2009/10/19 UP)