いつものブラックホークの執務室。
相変わらず書類仕事の量は半端ないが、急ぎの仕事や出撃命令もなく平和に仕事をこなしていたとある日。


「だーかーら、違うって言ってるでしょ!」

「ふん、解せんな・・・」


我らが参謀長官のアヤナミとブラックホーク一のトラブルメーカーヒュウガ少佐がなにやら真剣な顔をして言いあいをしていた。

普段ならヒュウガの呆れた言い分にアヤナミの鞭が唸ってそこでおしまいとなるのだが、今日は何か様子が違う。
真剣なのだ、あのアヤナミまで。
しかし良く良く聞いているとその会話というのが・・・


「蜂蜜でしょ。」

「いや、練乳だな。」


時間は三時を少し回った頃。
今日もみんなでオヤツにしましょうと焼いてくれたカツラギ大佐特製のホットケーキを前にして、その会話内容というなんだか平和な光景なのである。
あのアヤナミがそれに加わっているのが不思議と言えば不思議であるが・・・

しかし人の好みの問題などぶっちゃけどっちでもいいだろうと思うが、人間譲れないものがあるのも確か。


「アヤたんの分からずや!」

「貴様の頭が堅いだけだろう?」


どんどんヒートアップしてゆくその口論にそろそろ仲裁に入った方がいいだろうとアヤナミとヒュウガのベグライターであるテイトとコナツが間に入ってきた。

「少佐、いいかげんにしたらどうですか?」

好みなんて人それぞれでしょうと、普段からヒュウガのわがままに悩まされているコナツらしいツッコミが入る。

「そうですよ。
 俺は今日はイチゴジャムにしようかと思ってるし・・・」

どこか天然の入った事を言いつつ、これまたカツラギが春に大量作り置きしていたイチゴジャムの瓶を持っていたテイトが言う。
自分のホットケーキにかけるつもりで持ってきていたのだろう、両手で抱きしめるように瓶を持つ姿は歳相応でとても可愛らしい。

「あ、それも美味しそうだなぁ・・・」

私もそれにしようかなと言うコナツ。
特製のホットケーキに特製のジャム、きっととても美味しいだろう。
しかしブラックホークではもはやクロユリと並んで有名なコナツの独特な嗜好感覚に普通に苺ジャムと言うわけにはいかず・・・

「それに鰹節をかけたらもっと美味しいと思うんだけど?」

「・・・えと、おれはコナツさんがいいならいいと思いますよ?」

先輩の独特な好みに苦笑いで答えるテイトであった。

「二人とも、ケンカしてる間に冷めちゃいますよ?」

早く食べたくて我慢できなくなったテイトが二人にそう言った。
テイトとコナツも二人のケンカに関わってる暇があったら早くオヤツにしたいのだ。
せっかくのカツラギ大佐のオヤツ、出来ればより美味しいうちにいただきたい。
しかし・・・

「「何を言っている(るの)?」」

「「え?」」

自分達のベグライターが言っている事に対して不思議な顔をするアヤナミとヒュウガ。
しかし不思議な顔をしなければいけないのはコナツとテイトも同じで・・・

「・・・ホットケーキにかけるシロップの話じゃないんですか?」

というかそれ意外に何を論争するというのか。
カツラギ特製ホットケーキを前にして。
げげんな顔をする二人にヒュウガが答えを返す。

「コナツとテイト君に掛けてプレイするならどっちがいいかって言ってたんだけど?」

「はぁ!?」

「ふぇぇっ!?」

思ってもみなかった上司兼恋人の口論のネタがまさか自分達のことだとは。
しかもさらっと言ってくれたが、確実に日中堂々と言うのが憚られる内容だとはコナツもテイトも予想打にしていなかった。

その上これがヒュウガだけの言い分なら冗談で済ませられるものの、思わず振り向いて顔を見てしまったあのアヤナミ参謀が否定しないのだ。
これは本当にこの話題で激論を交わしていたのだと信じざるをえないベグライターは呆れや恥ずかしさで空いた口が塞がらない。

「だから、蜂蜜だって!
 コナツの髪は蜂蜜みたいな色だからきっとコナツが溶けたみたいになるんだってば!!」

そんな二人を尻目に拳を振り上げてまで力説するヒュウガに・・・

「対象的な色だからこそ良いのだ。
 テイトの黒い髪に白は良く映える。」

がんとして譲る気のないアヤナミ。

「それなら別に練乳使わなくてもできるじゃん!
 アヤナたんのせい・・・」

「こ、このアホ少佐ぁぁぁぁぁぁ!!」

「ごふうっ!!」

危険な単語を言い終わる前にヒュウガは自身の(蜂蜜の様に甘いと言われている)ベグライター、コナツの鉄拳によって美しく弧を描いて吹き飛び、床に沈められた。
しかしどこか誇らしげにしていたのは見間違いだと信じていよう。

「うぅ・・・
 えっと・・・うわっ!?」

そして普段冷静な(しかし夜は凄いらしい)アヤナミが自分にそんな事を思っていたことを知って、イチゴジャムのように真っ赤になってしまったテイトは混乱したのか何も無い所でつまずいてしまい、手に持っていたジャムを頭からかぶってしまった。

そんなテイトを見つめつつ、ドS参謀長官は練乳も良いがイチゴジャムもいいな、と己のベグライターを無言て見つめていたなどきっと幻想だと信じたい。


平和な昼下がりのオヤツの時間。
しかしホーブルグ要塞一の騒がしさを誇るブラックホークにとって平和など色々な意味でほど遠い言葉であると思い知らされた時間であった。




そして実際、ベグライター達が尊敬する上官にそれらをかけられたのかはそれぞれの上官だけが知る。

















コナツには蜂蜜でテイトには練乳が似合うねって話(爆)
で、グラサンは甘い物が好きでアヤたんは白が好きだねって話(爆)

初07ネタがこれってどうなの?
しかし超楽しいので良しとする(爆)

しかしアヤナミ様が難しい。
喋らない、エロくならない、かっこよくならない、困った(滝汗)
かっこよさ三割(以上だな)減でお送りしていこうと思います(逃げたな!)(2009/10/11 UP)


(2009/10/18日改正)
コナツの嗜好をすっかり忘れておりました。
いや、考えてたんですが、その台詞を入れるのを忘れたというか・・・
のでちょっと改訂しました。
彼の感覚、ちょっとでも近づけたでしょうかね?