多分断られるだろう事は分かっていた。
迷惑になってしまうだろうという事も分かっていた。
けれど、どうしようもなくて。
この気持ちは私の中だけじゃ整理がつかなくて。
只、私も共にと・・・
「コナツ、アヤたんに聞いたよ。」
誰もいない士官学校の隅にぽつんとあるような庭。
誰にも見つかりたくなくていつの間にか着いてしまっていたそこだがこの人には簡単に見つかってしまったようだ。
「少佐・・・」
その聞き慣れた声にぼんやり来たか、なんて思った。
そして今からこの人が言うのだろう内容も簡単に想像がついた。
まぁそうなるようにしてしまった原因は私にあるとは分かっているけれど・・・
「コナツ、なんで、そんなお願いしたの?」
私が何も言わない事に焦れた少佐の声に押さえきれない怒気が混じっているのは分かったが、今の私には恐いなんて全然思えなかった。
だって私は何も少佐に悪と思うことをしたなんて思わなかったから・・・
「だって、アヤナミ様がいなくなったら皆いなくなるんでしょう?」
「コナツ・・・」
さっき少佐の口から聞いたブラックホークの話が甦る。
アヤナミ様が死んだのなら、魂の半分を持っているクロユリ中佐も、ハルセさんも・・・
「少佐も・・・いなくなるんでしょう?」
私を置いて・・・
私を、この世界に残して・・・
皆、アヤナミ様と一緒に死んでしまうのだと・・・
「コナツ・・・」
「私もっ・・・
私も連れて行ってください!」
私に黒法術が使えないのは知っている。
だからアヤナミ様に無理に魂を持って頂いてまで生きる必要などないのも分かっている。
そのせいでアヤナミ様にご迷惑をかけたことだって、他の皆に心配をかけたことだって、少佐がそれで怒っているのも理解している。
けれどそれ以上に・・・
「私を・・・置いて逝かないで・・・」
私を信頼して傍に置いてくれているのだというのなら・・・
私にアヤナミ様の本当の姿を、少佐達がどうして平然と黒法術を使っていられるのかという秘密を教えたのなら尚更・・・
「私も・・・連れて逝って・・・」
頬を熱いモノが伝ってゆく。
私は気がつけば涙を流していた。
それを拭うことなく私は懇願する。
置いて逝かれたくなくて。
ようやく見つけた私の居場所は此処だから。
だから、私もアヤナミ様が逝くなら一緒に・・・
少佐と共に・・・
私も・・・
「コナツ・・・」
けれど私の必死の訴えは少佐の声に遮られる。
そしてひたり、と少佐が抜いた刃が私の首筋に当てられた。
「しょう・・・さ・・・?」
そのヒヤリとした感触は私の心を鎮めていくと共に、このまま終わってしまっても良いとすら思えた。
少佐に、少佐の手で終わるなら・・・と。
「少佐?」
けれどその刃はそれ以上動くことはなく、私の左首に触れたまま・・・
「俺が死んだら・・・」
「!?」
刀を構えたまま、更に低くなった声で告げられたその言葉に私の血の気は一気に引いた。
あり得ない、少佐が死ぬなんて・・・
「そんなこと・・・」
あるわけないじゃないですか、とますます溢れてきた涙を拭いもせずに告げようとした声を遮られ少佐は続ける。
「なら、なんでそんなこと言うの?」
「!?」
「俺は強いしアヤたんはもっと強い。
コナツは、それでも死ぬなんて思う?」
舐められたもんだよねぇ・・・と言う少佐にますます何も言えなくなってゆく。
少佐やアヤナミ様に対する侮辱以外の何者でもないのだと思うと尚更・・・
「違っ・・・」
そんなこと、一瞬だって思ったことはなかった。
アヤナミ様はとても強くて、誰も敵わないバルスブルグ一の軍師。
少佐も普段はサボってばかりいるけれど、ひとたび戦場に下りると誰にも負けない剣の達人で。
そんな人たちが死ぬなど誰が考えつくのだろうか?
けれど、さっき私が考えていた事の根底にはアヤナミ様の・・・少佐の死があった。
そんなこと思っていない筈だったのに・・・
「違う・・・死ぬなんて・・・」
「だったらいらないじゃん。」
「え?」
「アヤたんに魂持って貰わなくてもいいじゃん。」
止まらない涙を拭う優しい手に逆に涙がこぼれてしまった。
けれど少佐は白い手袋にじんわりとにじんでゆく涙を気にせず私に言った。
「でも、それでも俺が死ぬようなら・・・
この刀をコナツが引けばいい。」
「!!」
涙を拭われていた時もずっと私の首筋に触れたままぴくりとも動かさないそれを撫で上げながら言われた。
それはとても甘い囁きに聞こえた私はきっとおかしいのだろう。
けれど少佐に優しく告げられたその言葉に私の心は嬉しいと言って跳ね上がる。
「私は・・・少佐に・・・」
しょうさにだけころされるんだ・・・
そう考えると無意識のうちに頬がゆるんでいたようだ。
それを面白そうに指定する少佐に顔が熱くなってしまった。
「だからね、コナツはいいんだよ。」
「・・・はい。」
最後にもう一度、私の目尻に残っていた涙の跡をなぞると首筋に触れたままだった刀と少佐の手が離れてゆく。
それを少し残念な気持ちで見つめてしまったら少佐に頭を一撫でされた。
本当、この人には敵わない。
「それにさぁ〜アヤたんに委ねるなんて面白くないし。」
「少佐?」
「さっきからアヤナミ様アヤナミ様ってさ〜
俺に相談も無しにアヤたんに直談判しに行っちゃうし〜」
「あの・・・少佐?」
刀をしまった途端いつもの調子に戻るのだと思っていたが、何故だろう。
さっきとは違う感じで怒っている口調に理由が分からないでいると顔を覗き込まれていた。
「コナツはさぁ・・・誰のベグライターなのかなぁ?」
「!!」
その一言で少佐が怒っている理由が分かってなんだかこっちが恥ずかしくなってしまった。
しかもさっきまで刃があたっていた首筋を撫でられながら、更に恥ずかしい事を言ってのけられた。
「コナツは俺のだから・・・
殺すなら俺が殺してあげる。」
いつか教えてもらった、刀は自分の一部だと、自分の身体だと。
そんな刃でいつか私は貫かれるのだろうか?
それでも、たくさんの血で染まった貴方の刀が、貴方の腕が最後は私の血で染まる日を想像すると心が踊る。
そんな私は、私達はきっと普通ではないのだろう。
けれどそれでいい。
そうすれば、私は・・・この人と共にずっといられるのだから・・・
クロユリ中佐とハルセさんのように繋がれなくとも、アヤナミ様と少佐達のように一連托生の関係でなくともいい。
だって・・・
「はい、私は・・・貴方のベグライターです。」
ずっと・・・
私は貴方の、貴方だけのモノだから・・・
この命が尽きても貴方と共に・・・
ヤンデレ?こなちゅ。
おかしくなぁ、シリアスのつもりだったんですが・・・
何処に行きたかったのこなっちゃん?
某所様から拝借させて頂いた(許可はもらいました)ネタなのになんかすみません感が漂ってきます。
勝手にずっと疑問だったマイ設定なネタを入れまくった結果です。
いや、コナツって黒法術使えないから別に魂半分じゃなくてもいいんだよねって・・・
しかも後から見るとネタは少佐が死ぬ間際に〜な事も言ってて、全然死ぬ間際じゃねぇっ!!
すみませんなんか色々すみません。
そして更にお前何してるのな後から思いついた続きで死ぬ間際ネタがあります。
ちょっとグロ気味でさらにコナツヤンデレ度が高いですが、それでも大丈夫って方は下にずずっとスクロールして下さい。
こっちも変わらずに何処に行きたいの、なカンジですが、よろしければどうぞです〜(2009/11/23 UP)
こんな日がいつか来るかもしれないと思っていたし、来ないかもしれないとも思っていた。
アヤナミ様の部隊は最強だから誰にも負けないとも思っていたし、最強だからこそいつかあっけなく壊れてしまうかもしれないとも思っていた。
世の中に絶対なんてない。
だから名も知らない兵士がアヤナミ様が死んだと言っていたことも、その時には私が助からない程の重症を負ってしまっていたことも、絶対に無いと言いきれない今ここにある結果でしかない。
運命なんて言葉で片付けるなんてごめんだけれど、事実そうなってしまったのだから仕方ない。
いや、そうなってしまったからこそ私にはやらなければいけない事があった。
もう動かない筈の身体を動かしているのはひとえにこの想いを叶えたいからだ。
あの日、あの人にそう望まれてから私はずっとその時を思い描きながら過ごしてきた。
「殺されてなんかやるものか・・・」
身も知らない人間に殺されるなんて冗談ではない。
大きな傷口は内蔵にまで達しているようで、沸き上がってくる吐き気に口の中は血の味しかしないし、身体中の大小いくつもの傷は私の脳に痛みと限界を訴えてくる。
けれどそれ以上に私には叶えたい願いがある。
その為だけに本来なら動くことすらままならない自分の身体だって動かしてみせる。
「私を殺していいのは・・・」
雑兵のような奴らに殺されてなんてやるものか。
あっけなく死んでなんてやるものか。
この世で只一人なのだ。
わたしをころしてもいいのは・・・
「少佐・・・」
私を殺していいのは私が共に在ることを誓ったあの人だけなのだから・・・
だから私はあの人を探す。
けれど探すと言ってもあの人を見つけるなんて簡単。
だって私は彼のベグライターなのだから。
何度、仕事をサボる彼を見つけただろう。
何度、戦場で一人佇む彼を迎えに行っただろう。
だからすぐに見つけることが出来る。
悲鳴を上げ続ける身体を引き千切って私は進む。
事切れ、倒れている人間だったモノが転がる先へ。
そこにはきっとあの人がいるはずだから・・・
「少佐・・・」
私を殺していいのは貴方だけなのだから・・・
ようやく想像していたような場所に辿り着いた。
一際激しく戦闘があったことが一瞬で分かるほどの屍の多さ。
自分の血で判らなくなってしまったが、きっと胸が悪くなるような血の匂いが充満しているのだろうその場所。
でもあの人はそこにはいなかった。
けれど・・・
「少佐・・・」
あの人はいなかったけれど一振りの刀が落ちていた。
あの人が逝ってしまうまで握り絞めていたのだろうそれは半分乾きかけた血溜りの中、誇らしげに存在していた。
それはまるで、戦いの終わった戦場に佇むあの人のよう。
いやこれは、あの人そのものなのだ。
剣は自分の一部なのだと、そう教えてくれたのは紛れもなくあの人なのだから・・・
「少佐・・・
ここにいたんですね。」
探しましたよ、なんて笑ってしまう自分はきっとおかしくなっているのだろう。
見つかっちゃった〜なんて声が聞こえてくる自分はきっと変なのだろう。
けれど私はこう答える。
「私は・・・貴方のベグライターです。」
・・・と。
私は貴方のベグライターだから、どんな時も貴方を探すのです。
私は貴方のベグライターだから、ずっと貴方の傍に。
貴方が逝くと言うのなら何処までも共に・・・
「今、そちらに・・・」
血溜りの中、なんとか動く左の手であの人の残骸を抱きしめる。
初めて貴方に刀を頂いた時の様に。
それはとてもいとおしくて、嬉しくて。
いつか貴方に付いていくと誓った日の事が甦る。
「私は、これからも貴方と共に逝きます。」
そしてしばらく抱きしめていたその柄を握り、その刃を首筋に当てる。
たくさんの血で汚れてしまったその刃の切れ味はきっと最悪だろうなぁ、なんて頭の何処かで思ったけれどそれ以上にこれから私がすることへの歓喜が溢れる。
「私は・・・貴方のベグライターです。」
貴方だけのベグライターだから。
だから、貴方とずっと共に・・・
あの日、左首に当てられた少佐の腕を一気に押し付けた。
多分アヤナミ様死んで少佐も消えちゃったみたいな?
敵は教会かもしれないし、黒幕さんてきなアイツかもしれないし、背景とか全然考えてないのはもはやいつものことです。
雰囲気で読んで下さい(待てやコラ)
とにかく急遽降りてきたネタでした。
これで少佐死んじゃうって時って条件は満たした・・・筈(えぇ!?)
少佐出でないけどな(爆)
スミマセン、素敵ネタにこんな意味不明な文章しか書けないヤツで・・・
でも楽しかったです。
またネタがあったら下さいね(ちょ、お前何言ってるの!!!)